A1115 横濱今昔写真蔵
吉田橋より伊勢佐木町通り入口を写している。人通りは多く、徒歩の他にも人力車で移動している姿も確認できる。通り右側にはガス灯が立っているのも写っている。ガス灯の後ろに建っている三角屋根は吉田町1丁目10番「横浜館」。その向かい側の3階建てビルは伊勢佐木町1丁目2番「帝国商品館」。どちらも「勧工場(かんこうば)」という商業施設。当時の商店は、店主と客が商談をして品物を見定める座売り方式で、特定の商品を扱うのが常識であったところ、勧工場は商品を棚や机に陳列して販売し、販売品目も衣服から雑貨、荒物まで幅広く扱った。現代でいうところのデパートやショッピングモールの原型と言える商業施設であった。横浜館、帝国商品館ともに明治32年(1899)の開店。帝国商品館は中が吹き抜けになっていて、上階にはビヤホールが入居していた。どちらも伊勢佐木町通りの入り口ともあって繁昌したが、帝国商品館は大正3年(1914)に火災で焼失。横浜館は明治44年(1911)になって活動写真館(映画館)に業態を変更。勧工場としての営業を終了した。活動写真館に変わった後も1360人収容できる大規模な活動写真館として人を集めたが、大正12年(1923)に発生した関東大震災で焼失。すぐに再建されたが、しばらくして閉館した模様。
他にもこの古写真では、帝国商品館の左隣に伊勢佐木町1丁目1番のそば屋「東京庵」、横浜館の右隣に吉田町1丁目1番の帽子屋「金港館野崎商店」などが確認できる。
被写体:横浜館、帝国商品館、東京庵、金港館野崎商店
参考文献:地図で楽しむ横浜の近代、中区わが街、横濱社会辞彙、横浜商工名鑑(大7)、横濱成功名誉鑑、横浜中区史
ワンポイント:表面の筆記体文字は、この絵葉書を使用した人の筆跡。