A1170 横濱成功名誉鑑
伊勢佐木町2丁目21番(現 同1丁目7-1)。
「越前屋呉服店」は明治16年(1883)創業。はじめ吉田町に店舗を置いていたが、明治32年(1899)に伊勢佐木町周辺で発生した「雲井町大火」以降に伊勢佐木町へ移って来たものと思われる。関東大震災前に町内に存在した呉服店の中では当時最も著名であり、その名声は、弁天通2丁目にあった野澤屋(後に伊勢佐木町に出店して松坂屋に改名)、石川町にあった鶴屋(後の松屋百貨店)、寿町にあった相模屋と合わせて"横浜4大呉服店"の一つに数えられるほどであった。伊勢佐木町出店当初は、古写真右側に写っている蔵造の建物のみで営業していたが、明治42年(1909)になって左隣に鉄骨レンガ造3階建ての新館を増設した。新館の店先にはショーウインドウが設けられ、店内は1階が雑貨売り場、2階は従来の呉服売り場、3階は価格均一売り場と喫茶室とされ、 屋上には休憩所としての庭園が設けられた。店内で催事が行われた日の夜には、外壁にイルミネーションが施されたという。それと同じ頃、それまで一般的であった販売方法である店主と客が商談をして商品を購入するかどうかを決める座売り方式を、現代と同じような陳列販売方式に改め、扱う商品も呉服だけではなく化粧品や雑貨、玩具に拡大した。店の規模、見せ方、売り方からして呉服店からデパートへと進化しつつあり、庭園はまさに元祖“デパートの屋上”と言えるものであった。旧館、新館ともに、大正12年(1923)の関東大震災で滅失してしまったが、昭和6年(1931)に再建された建物は松屋や松坂屋など所有者の移り変わりを経て、今も「エクセル伊勢佐木」として残っている。
被写体:横浜館 帝国商品館
正面の建物がエクセル伊勢佐木。