日本における郵便事業が始まったのは明治4年(1871)のこと。1枚の紙が切手、封筒、便箋の三役を兼ねる郵便物、すなわち「葉書」が初めて発行されたのは、それから2年後の明治6年(1873)のことです。そのとき発行されていた葉書は「官製葉書」と呼ばれるもので、当時の郵便事業を担う省庁が発行したものに限られており、民間発行の私製葉書や絵葉書は存在していませんでした。
私製葉書の使用が認められたのは明治33年(1900)のこと。それに伴って絵葉書の発行も認められることになります。明治35年(1902)には逓信省が官製葉書として初めての絵葉書「万国郵便連合加盟二十五年記念絵葉書」を発行。さらに明治37年(1904)に日露戦争の祝勝記念絵葉書を発行すると人気が殺到します。絵葉書は通信手段としてだけでなく、その時々の事象を伝えるメディア、各地の風景写真を集めてコレクションをする娯楽としても人気が高まり、民間でも私製絵葉書が多く制作・販売されるようになりました。明治後期ともなると絵葉書文化は全国に広がり、白黒の風景写真に色付けをした「手彩色絵葉書」がお土産品として各地で販売されるようになります。
全て手作業で彩色されていたので、上の2枚の絵葉書のように、同じ写真の絵葉書でも色合いや塗装している場所が違うものもありました。また、下の2枚の絵葉書のように、同じ写真でも彩色されることとされないことがありました。