A3045 横濱今昔写真蔵
現在の伊勢佐木町3丁目中ほどから2丁目方向を望む。写真中央やや左に見えるドーム屋根は、明治大正期から存在する邦画専門活動写真館の「又楽館」だが、この後まもなく閉館している。一方、その手前に建っているビルは「ラ・モーダビル」として、横浜大空襲を乗り越えて今日まで現存している。
ラ・モーダビルの所在地は伊勢佐木町3丁目99番地。建物の竣工年や当時の建物名は定かではないが、昭和5年(1930)撮影の当古写真に写っていることの状況証拠や、同年刊行の「横浜市商工名鑑」に該当番地で「山田貴金属店」が営業していることが関東大震災後で最古の情報であることを見るに、少なくとも昭和5年(1930)までに建設されたことは確かなようである。翌年昭和6年(1931)の官報では「山田合名会社」、昭和7年(1932)の官報では「丸東商店横浜支店」、昭和11年(1936)の「東京・横濱近懸職業別電話名簿」では「松田食器店」が当地で営業していたのが確認できる。戦後の昭和34年(1959)からしばらくは「洋食屋小西」が営業していた。「ラ・モーダビル」の名称が現れるのは平成期に入ってからのことである。
又楽館は、邦画専門映画館として明治45年(1912)に開館した。支配人は内山梅吉という人物。内山氏は、横浜市内及び伊勢佐木町界隈で初めて開館した映画館とされる「開港紀念電気館」も明治43年(1910)に開いていて、伊勢佐木町のシネマ街としての歴史の幕を開いたともいえる人物である。関東大震災で被災した後にバラック建てで営業再開した後、昭和5年(1930)に閉館した。閉館後の跡地には隣接地の「オデオン座」が拡張された。
被写体:又楽館、現存建築
参考文献:地図で楽しむ横浜の近代、東京・横濱近懸職業別電話名簿、中区わが街、ハマの建物探検、モダン横濱案内、横浜市商工案内、横浜中区史、横浜・港・近代建築、横浜都市発展記念館
ワンポイント:
謎の現存ビル。
「ラ・モーダ・ビル」