A1139 横濱今昔写真蔵
こちらの写真より若干3丁目方向へと進んだアングル。
通り右側にたなびく「花見せんべい」の旗は、松ヶ枝町36番地の煎餅店「吾妻屋」。明治38年(1905)に東京人形町で創業。伊勢佐木町に支店を構えたのは明治45年(1912)のことであるとされる。大正2年(1913)に伊勢佐木町2丁目19番地(現伊勢佐木町2丁目60番)へと移転。「豊顕寺の観桜」、「三渓園の秋月」といった横浜の名所をイメージした季節の商品を販売し、路地を挟んで隣り合う亀楽煎餅店と合わせて横濱土産の名店として知られた。関東大震災、横浜大空襲を乗り越えて同地で営業を続けたが、平成30年(2018)をもって閉店した。
通り左側手前は、松ヶ枝町5番地「満利屋」。本店は吉田町1丁目に所在し、こちらは支店だった。玩具を扱う店であったが、明治43年(1910)刊行の「横濱成功名誉鑑」によると、店主の松村栄一は、もとは江戸幕府に仕えて長州征伐にも従軍した幕臣であったという。朝7時頃から8時頃には、店内から竹刀の音が聞こえたとも。店は戦後まで存続した。店舗跡地の建物は今も「満利屋ビル」(伊勢佐木町2丁目66)。
遠くに見える西洋建築は、松ヶ枝町66番地の「左右田銀行」である。
被写体:左右田銀行、花見煎餅、満利屋
参考文献:地図で楽しむ横浜の近代、中区わが街、横濱社会辞彙、横浜商工名鑑(大7)、横濱成功名誉鑑、横浜中区史
ワンポイント:
撮影/島田翔陽